代表挨拶
医学物理士認定機構 代表理事
唐澤 久美子
医学物理士とは、国際労働機関(ILO)の国際標準職業分類ISCO-08においてMedical Physicist「物理学に関連する科学的知識を医療の分野に応用する職業」と規定されている職を指し、日本では「放射線医学における物理的および技術的課題の解決に先導的役割を担う者」と定義され、一般財団法人医学物理士認定機構(JBMP)が認定しています。
医学物理士の業務には、医療・研究開発・教育があり、放射線治療物理学分野、画像診断物理学分野、核医学物理学分野、放射線防護・安全管理学分野で、医学及び医療の発展に寄与しています。
わが国における医学物理士の認定は、1987年に日本医学放射線学会(JRS)が行った第1回医学物理学者認定試験での70名の認定に始まります。当初は理工系出身者が医学物理業務に携わるための資格認定で、2002年においても認定者は140名に過ぎませんでした。この時期には、医学物理士の医療現場における立ち位置が不明確であったことなどから臨床に従事する医学物理士は多くありませんでしたが、放射線機器や技術が進歩して多くの医学物理業務が必要となってきたことより、2002年に医学物理士認定認定規約を改正し一定の条件を満たす診療放射線技師も資格取得可能としました。2004年の診療報酬の改定より高精度放射線治療の診療報酬請求において、専ら医学物理業務を行うものの関与が必要とされたことなども医学物理士の認知を後押しし、2008年の医学物理士認定者は499名と増加しました。
認定事業の拡大を受け、2009年にJRSと日本医学物理学会(JSMP:2000年にJRSから分離)を財産の拠出者としてJBMPが設立されました。2012年には日本放射線腫瘍学会(JASTRO)も加わり現在は3学会を財産の拠出者として、医学物理士の認定、医学物理教育コースの認定とそれに関わる事業を行なっています。
質の高い医学物理士の養成には適切な教育カリキュラムと教育コースが必要です。医学物理教育カリキュラムは、2008年にJRS医学物理士委員会が策定した後、JBMPが引継ぎ、2011年、2014年、2018年、2020年に改定を行ない、機器や技術の進歩、社会のニーズに対応しています。医学物理学の教育体制は、2007年から文部科学省の施策として開始された「がんプロフェッショナル養成プラン」に大学院医学物理教育コースが盛り込まれたことを契機として整備が進みました。JBMPでは2012年より医学物理教育カリキュラムに則った教育を行っているコースを「認定医学物理教育コース」として認定を開始し、2021年4月現在、修士課程22大学院25コース、博士課程10大学院13コース、臨床研修課程2病院が認定されています。
医学物理士認定は、年1回の認定試験と認定審査を継続し、2021年4月現在の医学物理士資格保有者は1336名となりました。また、放射線治療の現場における医学物理士の活躍を受け、2019年には治療専門医学物理士の認定制度を開始し、2021年4月現在60名が認定されています。
JBMPの目的は、医学物理士の認定事業を行い、もって医学及び医療の発展に寄与することです。医学物理士の活躍により国民が広く適正な放射線医療の恩恵を受けられる体制が築かれるよう、引き続き事業に邁進して参りますので、関係の皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。